古民家の教科書
古民家の耐震補強に使える補助金【診断無料の自治体も】
補助金ガイド

古民家の耐震補強に使える補助金【診断無料の自治体も】


古民家の耐震補強には最大300万円の補助金が出ます。診断は無料の自治体も多数あります

古民家の耐震補強は、命を守るための最優先事項です。1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた古民家は、現行基準を満たしていない可能性が高く、耐震補強が強く推奨されています。ありがたいことに、耐震関連の補助金は他のリフォーム補助と比べて特に手厚いのが特徴です。


1981年(昭和56年)の耐震基準とは

まず「旧耐震基準」と「新耐震基準」の違いを知っておきましょう。

項目旧耐震基準(1981年以前)新耐震基準(1981年以降)
想定する地震震度5強程度震度6強〜7
設計の考え方建物が壊れないこと建物が倒壊しないこと
古民家との関係ほぼすべての古民家が該当

1981年以前に建てられた建物は、大きな地震で倒壊するリスクがあります。古民家は築50年以上が一般的ですので、ほぼすべてが旧耐震基準の建物です。


耐震診断の補助金

耐震診断とは

専門家が建物の構造を調査し、どの程度の地震に耐えられるかを数値で評価するものです。

  • 所要時間: 現地調査に半日〜1日、報告書の作成に2〜4週間
  • 診断費用: 木造住宅で10〜30万円(規模による)
  • 診断結果: 「上部構造評点」という数値で表される(1.0以上で「倒壊しない」)

補助金の内容

項目内容
補助率診断費用の2/3〜全額
自己負担ゼロ〜数万円で済む自治体が多い
無料診断の自治体全国に多数あり
申請先市区町村の建築指導課・住宅課

耐震診断が無料の自治体の例

自治体診断費用の自己負担
東京都多くの区市無料(全額補助)
横浜市無料(市が費用負担)
大阪市無料(木造住宅)
名古屋市無料(木造住宅)
静岡県内の多くの市町無料(県の制度)
京都市自己負担3,000円のみ

多くの市区町村で、何らかの耐震診断補助を実施しています。まずはお住まいの自治体に「無料の耐震診断はありますか?」と聞いてみてください。


耐震改修の補助金

国の制度: 住宅・建築物安全ストック形成事業

国土交通省が実施する耐震改修支援の中核的な制度です。

  • 補助率: 工事費の23%(国の補助) ※条件により補助率の変動あり
  • 自治体の上乗せ: 多くの自治体が国の補助に上乗せして補助
  • 合計補助額: 100〜300万円が一般的
  • 対象: 1981年以前の旧耐震基準の建物

補助額の計算例

耐震改修工事費が400万円の場合:

補助の内訳金額
国の補助(23%)92万円
自治体の上乗せ(例: 自治体負担11.5%)46万円
合計補助額138万円
自己負担262万円

自治体によっては上乗せ幅がもっと大きく、自己負担が100万円台になるケースもあります。

自治体ごとの補助額の例

自治体補助上限額備考
東京都墨田区最大300万円高齢者世帯は加算あり
静岡県静岡市最大100万円県と市の合計
京都市木造住宅最大200万円 / 京町家最大300万円「まちの匠・ぷらす」(年度ごとの予算事業のため最新募集要項を確認)
兵庫県最大130万円県の補助+市町上乗せ
新潟県長岡市最大150万円豪雪地域加算あり

古民家特有の伝統工法と耐震

古民家の構造の特徴

古民家は現代の木造住宅とは構造の考え方が根本的に異なります

項目現代の木造住宅(在来工法)古民家(伝統工法)
基礎コンクリート基礎石場建て(石の上に柱を載せる)
耐震の考え方壁で地震力に耐える(剛構造)柱と梁で揺れを受け流す(柔構造)
接合部金物で固定差し鴨居・貫・込み栓で組む
筋交い・耐力壁土壁(竹小舞+土塗り)

石場建て(いしばだて)

柱が石の上に載っているだけの基礎形式です。地震時に建物がわずかに動くことで、結果として地震エネルギーが分散される可能性があるとされています。

  • 一般的な耐震診断法(一般診断法)では正しく評価できないことがある
  • 伝統工法の耐震診断に対応した専門家に依頼することが重要

差し鴨居(さしがもい)

部屋の境にある太い横木で、見た目は鴨居ですが構造的に重要な役割を担っています。

  • 壁がなくても差し鴨居が建物の変形を抑制する効果がある
  • 安易に取り除くと建物の強度が大きく低下する

古民家の耐震補強の方法

方法1: 伝統的な柔構造を活かす

古民家の「柔らかく揺れを受け流す」特性を活かした補強方法です。

  • 制振ダンパーの設置: 揺れのエネルギーを吸収する装置を取り付ける
  • 柱脚金物の設置: 石場建ての柱が石から落ちないようにする
  • 仕口・継手の補強: 木組みの接合部に金物を追加する
  • 費用目安: 100〜300万円

方法2: 壁の補強

壁を追加・補強して建物の強度を上げる方法です。

  • 構造用合板の追加: 既存の壁に構造用合板を張る
  • 筋交いの追加: 壁の中に斜めの部材を入れる
  • 土壁の補修: 古い土壁を補修して耐力を回復させる
  • 費用目安: 50〜200万円

方法3: 基礎の補強

石場建てを補強する、または新たに基礎を設ける方法です。

  • 鉄筋コンクリート基礎の新設: 既存の石の下にコンクリート基礎を打つ
  • 基礎石の据え直し: ずれた基礎石を正しい位置に戻す
  • 費用目安: 100〜500万円

耐震診断〜補助金申請のスケジュール

時期やること
まず最初自治体に耐震診断の補助を確認・申し込み
1〜2ヶ月後耐震診断の実施(専門家が現地調査)
診断後診断結果をもとに補強計画を作成
計画決定後自治体に耐震改修補助金を申請
交付決定後耐震改修工事を実施
工事完了後完了報告・補助金の受領

トータルの期間は6ヶ月〜1年程度を見ておくと余裕を持てます。


耐震補強と他の補助金の組み合わせ

耐震改修は、他の補助金と併用しやすいのが大きなメリットです。

組み合わせ合計補助額の目安
耐震改修 + 省エネリフォーム300〜500万円
耐震改修 + 長期優良住宅化リフォーム250〜460万円
耐震改修 + 空き家活用補助200〜600万円
耐震改修 + バリアフリー化200〜400万円

耐震改修は「構造」に関する工事、省エネは「断熱」に関する工事と、対象が異なるため併用しやすいのです。


よくある質問

Q: 古民家を壊して建て替えたほうが安くないですか?

耐震改修だけ見れば建て替えのほうが合理的に思えることもあります。しかし、古民家には太い梁や柱、美しい建具、歴史的な価値があり、これは新築では得られません。また、古民家を登録有形文化財にすれば固定資産税の減額も受けられます。「残す価値」と「費用」の両面で判断してみてください。

Q: 伝統工法に詳しい専門家はどう探せばいいですか?

  • 日本民家再生協会(JMRA): 古民家再生の専門家ネットワーク
  • 自治体のヘリテージマネージャー: 歴史的建造物の専門知識を持つ建築士
  • 全国伝統建築技術保存会: 伝統工法の技術者
  • 自治体の住宅課に「伝統工法の耐震診断ができる方を紹介してください」と聞くのが一番確実です

Q: 耐震診断の結果が悪かったらどうなりますか?

診断結果が悪くても、補強工事で改善できます。むしろ診断結果が悪いほうが補助金の対象になりやすく、支援を受けやすくなります。「結果を知るのが怖い」と感じる方もいますが、知らないままでいるほうがずっと危険です。


まとめ: まず耐震診断から始めましょう

地震はいつ来るかわかりません。補助金が手厚い今のうちに、以下の3ステップで進めてみてください。

  1. 自治体に電話して「無料の耐震診断はありますか?」と聞く(多くの自治体で無料〜数千円)
  2. 診断結果をもとに、補強工事の計画を立てる(伝統工法に詳しい専門家に依頼)
  3. 耐震改修の補助金を申請してから工事に着手する(最大300万円の補助)

家族の安全を守るための一歩です。ぜひ今日、お住まいの自治体に電話してみてくださいね。


情報の最終確認: 2026-05-09
出典: 国交省「住まいの耐震化」公式サイトおよび京都市「まちの匠・ぷらす」を含む公募要領を照合済み


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